無料メルマガにて「脱うつ病」情報発信中!
TAG

小説

苦しみを吸い取る少女、ナラ1

1 潮の香りの漂う空気、靴まで侵入してくる細かい砂、青々と輝く水面。どれもこれも、現実に、目の前にあるのだ。 「おばあちゃんの言った通り」 ナラは砂浜に大きな茜色のリュックを下ろし、足を前に放り出した。一日中バスに乗っていたせいで、体のあちこちが痛かった。だけど体の疲れとは裏腹に、心は益々元気になって行くようだった。 海は祖母が話してくれた通り、いや、それよりももっと素敵なものに思えた。波の音が耳 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ2

2 「私のお父さんの感情を吸い取る?」 夕飯をご馳走になり、お湯をもらい、エマの小さな部屋で寛ぎつつ、ナラはさっきからずっと考えていた計画をエマに話した。 「ケンも心が平らになったら、エマを叩いたりしなくなるかもしれないじゃない。それに、私、ケンの気持ち、知りたいの」 ナラが、旅をしていること、今晩泊めて欲しいことを話すと、ケンと名乗ったエマのお父さんはナラを歓迎してくれた。ほっそりとしていて、大 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ3

3 この国では電話を持ち歩く人もいるし持ち歩かない人もいる。ナラは持ち歩いていない。だから、エマと別れたとき、彼女の家の住所と電話番号を書いたメモをもらった。これがあればいつでもまたエマと連絡を取ることができる。そう思うと心強さを感じた。 エマの家を出てから、ナラは、ひたすら海沿いを歩き続けていた。バスに乗ることも考えたけれど、ナラはまだ海の側を離れたくなかった。 もうどれくらい歩いたのだろう。海 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ4

4 ナラは布団の中、船の上でジョウの言ったことを考えていた。 「貧乏人の俺と金持ちとの間で一番苦しんでいるのは彼女なんだ。それに彼女は別にその金持ちのこと嫌いって訳でもないしな」 大好きでお金のない人と、別に好きでも嫌いでもないけどお金持ちの人。ナラなら迷いなく大好きな人を選ぶと思う。だって、大好きな人と一緒にいることより幸せなことってないと思うから。大人はこんな風には考えないのだろうか。 瞼が重 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ5

5 ジョウの家を出発し、バスは海沿いを走っていた。車内は二列ずつシートが並んでおり、ナラの隣は空席だ。 これまでの快晴が嘘のように、空からは大粒の雨が降り注いでいた。まだ昼なのに外は暗く、しかもナラは何だか寒くて、一人震えながら配布されたブランケットに身を包んでいた。 ナラはこの長距離バスで、海の側を離れようと決めていた。船にも乗ったし、もう充分、海を満喫したと思ったからだ。 そもそもナラが海を一 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ6

6 物心が付いたとき、ナラの側にいたのは両親ではなく、祖母だった。山脈の盆地、山を切り拓いてできた街の賑やかな通りに、祖母と暮らす家はあった。 白が基調の横に長い平屋の、一番奥がナラの部屋だ。部屋の窓から見渡せる小さな庭は、ナラの一番好きな場所だった。祖母の手で育てられた草花の芽吹く様子や、小さな命の息吹を、幼いナラは飽きずに眺めていたものだった。 季節のないこの街では、一年が穏やかに、そよ風と共 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ7

7 どれくらいの時間が過ぎただろうか。いつの間にか止んだ雨にも気付かず、ナラは歩き続けていた。夜は深まり、小雨に打たれて湿った服が体に纏わり付いてくる。 ふと顔を上げると、遠くの方に、何やら赤い光のようなものが浮かんでいた。あれは何かしら。暗闇を照らす不思議な煌きらめき。惹き付けられるように、ナラはその光のもとへと近付いて行った。 そこは大きな橋の下で、暗くて分からなかったけれど、側には幅広い川が […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ8

  8 「力のことで悩んどるんやったら、俺、ダンに聞いといたるわ」 「ダン?」 「ダンはじいちゃんの弟子なんよ。じいちゃんと一緒に旅しとったこともあるんやで。ほれに、俺も昔、じいちゃんから人の苦しみをとれる魔女の話聞いたことあんねん。ダンならもっと詳しいかもしれん」 すっかり旅支度を終えたライトとナラは、川を背に向かい合っている。 「ライトがおじいさんから聞いたのは、どんな話だったの?」 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ9

  9 川を離れ、田舎道を歩いて行くと、可愛い彫刻の施された建物に出会った。看板には『民俗博物館』と書かれている。こんな田舎に突然現れた、大きな宝箱のような建築に興味を惹かれたナラは、中に入ってみることにした。 受付には年齢不詳な感じの女性が一人で座っていた。ボワっとした髪が耳の横に垂れ下がり、縁の厚い眼鏡を掛けているので顔がよく分からない。ナラに気付くと女性は、 「いらっしゃいませ」 […]

苦しみを吸い取る少女、ナラ10

  10 モナカが教えてくれた道を通って、ナラは商店街を目指した。途中、これもモナカが教えてくれた通り、見事なラベンダー畑の前を通りかかった。紫に咲き乱れる可愛い花びらから、濃厚な香りが漂って来る。 「わあ、綺麗。満開だわ。ラベンダーって今の時期なのかしら」 四季のない街に住んでいたナラは、何月にどんな花が咲くかなどあまり詳しくなかった。 ラベンダー畑を過ぎて、しばらく歩くと、やっと、人 […]

>無料メルマガ発行中!

無料メルマガ発行中!

なぜコキリは10年も苦しんだうつを改善できたのか。「脱うつ病」の情報が受け取れるメールマガジン配信中です。

CTR IMG